老舗駅弁屋の謎!?港町は桃の産地だった!

 桃中軒という弊社の社名。読めない、とおっしゃる方は少なくありません。

「とうちゅうけん」とお読みください。

 

明治時代、一大旋風を巻き起こした桃中軒雲右衛門の亭号は、弊社に由来すると伝わっています。

120年以上前に、このセンス。ナイスです。

 

明治という時代にあって、なかなかアバンギャルドな風貌と芸風だった青年浪曲師は、

こともあろうか師匠の奥方と手に手をとっての逃避行。

 

その道中、沼津駅で桃中軒の駅弁を食べ、その美味しさのあまりその名をとって名乗り、

あらためて江戸に舞い戻って大成功を収めた、というエピソードをよくうかがいます。

 

「花は桜木、山なら富士よ、浪花節なら桃中軒…」

(三波春夫先生の「桃中軒雲右衛門とその妻」の歌詞にも登場いたします)

 

史実はいかばかりかはさて置き、おかげさまで、弊社の駅弁をご存知なくても、

桃中軒という名は、どこかで聞いたことがある、と言っていただくことも度々。

 

雲右衛門先生の名に負けぬよう、さらなる精進を心に誓う今日この頃です。

 

 

桃中軒の由来

 

さて、そもそも「桃中軒」という社名は、創業者・宇野三千三が当時、

桃の産地として知られる島郷に居を構えたことにちなんでおります。

 

沼津御用邸がある島郷周辺は、白砂松青の景色が広がる風光明媚な場所でした。

 

創業当時、この辺りは桃の産地として知られ、春には一面、桃の花に囲まれたといいます。

 

長く徳川幕府につかえた旗本の家柄だった宇野家。

 

明治元年、将軍・慶喜公が静岡に移った折に、桃の花咲く沼津市島郷に移り住みました。

 

沼津駅の開設に伴い、駅構内での弁当などの販売許可権を得て、明治24年に創業。

桃の花に囲まれた一軒家、という意味をこめた「桃中軒」が誕生いたしました。

ロゴマークは、もちろん桃。

 

以来126年。

時代は平成となり、島郷周辺も住宅が立ち並び、すっかり様変わりました。

 

沼津に住んでいる人でも、沼津が桃の里だったことを知る人は多くありません。

現在も桃を栽培している方は、数軒。それもごく限られた広さとのこと。

 

その内の一軒、原川由夫さんの桃畑を訪ねました。

 

 

現在の桃畑を訪ねて

 

住宅と住宅の間に、生垣で囲われた扉を開けると、中は、ちょうど満開の花が咲く桃畑でした。

生垣の外からは、うかがうことができない桃源郷のような風景です。

 

だいたい3月下旬ころ花が咲くそうですが、今年は桜も開花が遅くなったように、

桃の花も4月に入ってから咲きはじめたとのこと。

 

「こんなことは、最近では珍しいことです」と語る原川さん。

やはり気候が少しずつ変化してきているのを、感じているとおっしゃいます。

桃の木の根元には草除けにワラが敷き詰められていました。

 

桃は昔から栽培されていたんですか?

「海が近いこのあたりは、砂地でね。桃は砂地でよく育つんです」とのこと。

温暖な気候と相まって、島郷周辺は一面、桃畑だったのだそうです。

 

「終戦後、もののない時代は、おやつ代わりの甘いものとして、桃が喜ばれました。」

原川さんも、桃をよく召し上がったそうです。

それでも桃畑は、時代とともに宅地にとってかわり、今では、ほとんど残っていません。

昔を懐かしんで、庭に桃の木を1〜2本、植えているお宅が散見されるばかりです。

桃畑のまわりは住宅で囲まれています。

 

海が近いので、強い海風から守るため、桃畑の周囲には生垣がめぐらせてあります。

 

「風が強いと、果物が傷んでしまうんですよ」

言葉少なに語る原川さん。

 

満開の桃の花を見つめる目ざしは、とても優しく、桃への愛情が伝わってきます。

 

桃畑がほとんどなくなってしまいましたが、原川さんはこれからも残していかれたいと思われているんですか、

とお聞きしてみました。

 

「草畑にしておいても、仕方ないからね」

多くを語らない中にも、原川さんの表情からは桃を大切にしていきたい思いがうかがえました。

 

栽培量も限られているので、なかなか市場に出回ることがない沼津の桃。

 

白桃よりひとまわり小さく、果汁たっぷりで甘いのだそうです。

 

収穫は7月頃。

 

もはや幻の存在となってしまった沼津の桃とはどんな桃なのか。

 

いつかまた、もう一度、桃畑を訪ねてみようと思いました。

Posted by 桃中軒ウェブストア at 17:19 | - | comments(1) | -

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